孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)

孤独なバッタが群れるとき

きっかけなど

昆虫大学で値引きして売っていたので、想定外だったが、買ってしまった。安く手に入るならいいかと。本そのものよりもバッタ博士と自称している著者に興味があった。それにサイン本にもなるし。

著者を知ったのはツイッターでだった。それもやはり昆虫大学関連。ツイッターの名前が「バッタ博士」となっているが、まさか本当に博士だとはこの本を読むまで思わなかった。ツイートされてくる内容が変態ネタばかりで、まあ、それはお遊びと思っていたが、以下の画像を見て、本当に変態ではないかと思った。

モーリタニアのバッタ博士(孤独相)

私は、この手のシャレはかなり大丈夫なほうだと思っているが、昆虫大学が本当に大丈夫なのか、ちょっと心配になった。そして、バッタ博士への好感度は、この時点でかなり低くなった。

本書については最初、やはりツイッター上で知り、前野 ウルド 浩太郎と、著者名にミドルネームのウルドが入っているのを見て、バッタについてはくわしいのだろうが、やはりふざけたやつだと本気で思った(これは本書を読めばわかるが、大きな誤解である。ウルドは大変名誉な名前である)。

本書を紹介しているサイトで目次なども目にしたが、これについては興味をそそられた。見出しタイトルのつけ方のセンスが、どうも私と似ている(「盗撮の館」参照)。これについては逆に親近感を持った。この目次を見ていなければ、いくら値引きして売っていても、この本は買わなかっただろう。

それと、これはもう20年くらい前になると思うが、トノサマバッタが大量発生するときは翅も伸びて別種のようになるというのを弟から教えてもらったことがある。それについては、ずうっと不思議だなあと私も思っていた。(バッタの種類は違うが)そのメカニズムについては、ぜひ知りたいという興味はやはりあった。

感想

この本は、純粋にサバクトビバッタの研究の軌跡の書としても読めるし、若き研究者の成長物語としても読める。ちょっと荒削りな感じがするところがあるのも、著者の人柄とあいまっていい。上には変態と書いたが、本書を読めばいかに好青年かがわかるだろう(私がだまされているだけか?)。

昆虫大学の帰りの電車の中で本を開いた第一印象は「字がちっちゃい!」後日、本屋で同じシリーズ(フィールドの生物学)をはじめ、近くにあった本を開いて見比べてしまった。別に字が小さいということはなく、私が最近電車で読むのはビジネス書が多いから、字が大きい本ばかり読んでいるというだけだった。

読み始めると、出だしは快調で読みやすく、とてもわくわくしながら先に進んだ。しかし、中盤あたりで、私は一度挫折しそうになった。仕事が超繁忙期に突入していく時期であったせいもある。俺、そこまでバッタに興味ないしぃ、と内なる声が聞こえてきたりもした(笑)。

論文を読み慣れている人ならば、そういうこともなかったのだろう。しかし、こうなって、ああなって、こうで、だからこうで、と考えながら読むのが(特に仕事帰りで疲れている)電車の中では、私にはつらかった。そういうところがあった。

自然科学系のほかの本でもそうだが、どこまで実験の手順を書くかは難しいところだ。すべてを省いて結論だけ書いてしまうと、なぜそうなるのか納得がいかないこともあるし、くわしく書きすぎても、あまり面白みもなく、興味がある人は論文に目を通せばいいでしょうということになってしまう。このバランスが難しい。本書はそれがうまくいっているかというと、残念ながらそんなことはないと思う。とはいえ、失敗しているというわけでもない。

一度中断して、再度読み始めたのだが、途中からまた読みやすくなったように感じた。

最後は、謝辞、感謝のオンパレードで、まるでベートーヴェンの『運命』の終楽章の終結部分のように、これでもか、これでもかと出てくるが、これが著者の人柄なんだろうなあと思う。

途中に挟まれているコラムもなかなか面白い。電車の中で読んでいて一番びっくりしたのは、P119だ。その場で飛び上がりそうになった。そもそも昆虫大学を知らなければ、この本を知る可能性はきわめて低かったと思うが、その昆虫大学を知った経緯が、以下に書いた通り。

さらに、そもそも@Ohr_wurmさんと知り合いになったのは(ネット上だけだが)、以下の記事にトラックバックをいただいたのがきっかけ。もう6年以上も前というのも驚きだが。

そのトラックバック先の記事で元弘前大学の安藤喜一先生のことを知ったのだが、それがこの本の著者の大学時代の先生だったとは!カマキリとバッタが思わぬところでつながった。

もう四半世紀以上前になるが、私が高校生のとき、生物といえば分子生物学や遺伝子工学ばかりが注目されていた(今でもか?)。当時、私の中で、それは違う!と激しい拒絶があった。ファーブルのような素朴な、ありのままの虫の生態を知りたいと思った。

この『孤独なバッタが群れるとき』はまさにそんな研究で、だからこそ惹かれる。応援したくなる。P146、

この頃の私のキャッチフレーズは、「誰にでもできることを、誰にもできないくらいやろう」だった。

このセリフにグッと来たヒトも多いのではないか。10年近く前、管理職の研修で、

一流のビジネスマンとは、誰でもできることを、誰も真似できないくらい徹底的にやる人のことです。

と私は習った。自分でその道を突き進まんとする著者は素晴らしいと思った。

それにしても、生物の実験は、実験生物を飼うだけでも大変なものだとあらためて知った。

著者は実験室からフィールド調査へとモーリタニアに行くことになるのだが(私がツイッターで知ったときはすでにモーリタニアの住人だったが)、モーリタニアとはこの本を読むまでずうっと都市の名前であると勘違いしていた。国の名前だったのか(汗)。

さっそくモーリタニアを調べたのだが、ああ、モロッコの下ねえというのがまた間違いで、私がモロッコと思ったところは西サハラだった。単に私が無知なだけならばそれでいいのだが、それほど日本に知られていない国で生活するのはさぞ大変だろう。

ところで、私は一抹の不安を覚えながらこの本を読んできたのだが、P296にいたってホッとした。ああ、やっぱり考えていることは同じだなあと思った。

今は構想の段階なので披露するわけにはいかないが、これが実現するとき、歓喜の輪がアフリカを包むかもしれない。

というのは想像がつくが、一応黙っておこう。

購入・各種データ

画像は楽天ブックス、文字はアマゾンにリンクを張ってあります。著者はお金にだいぶ困っているようなので、印税収入のためにも買ってあげよう♪

孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)

関連サイト

  • 砂漠のリアルムシキング
    著者:前野ウルド浩太郎氏のブログ。タイミングによっては、変態ネタの記事に遭遇してしまうかもしれないので注意。

混沌の間>混沌の書棚>孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)

初回更新:2013-02-21 (木) 14:56:30
最終更新:2014-06-21 (土) 09:59:34
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