昆虫にとってコンビニとは何か?

昆虫にとってコンビニとは何か?

感想など

タイトルに惹かれて書棚から手にとってみたのがきっかけ。出版年から考えても間違いないと思うのだが、5年前のことだ。その後、何度かところどころ読み返している。

初めて読んだとき、ぶっ飛んだ。虫好きを自認する私でも辟易するようなマイナーな虫がたくさん出てくる。そうして、世の中にはこれほどまでに虫がいるということを改めて思い知らされる。

以下の28の項目からなる。

  1. 昆虫にとってとは何か?
  2. 昆虫にとってカビとは何か?
  3. 昆虫にとってとは何か?
  4. 昆虫にとってコンビニとは何か?
  5. 昆虫にとってビールとは何か?
  6. 昆虫にとってペットの糞とは何か?
  7. 昆虫にとって材木とは何か?
  8. 昆虫にとってイナゴの佃煮とは何か?
  9. 昆虫にとって人家とは何か?
  10. 昆虫にとってスギ林とは何か?
  11. 昆虫にとって小さな公園とは何か?
  12. 昆虫にとってゴルフ場とは何か?
  13. 昆虫にとって沖縄とは何か?
  14. 昆虫にとって小笠原とは何か?
  15. 昆虫にとってスーパーとは何か?
  16. 昆虫にとって台所とは何か?
  17. 昆虫にとってファーブルとは何か?
  18. 昆虫にとって名前とは何か?
  19. 昆虫にとって生き虫の輸入とは何か?
  20. 昆虫にとって自然保護とは何か?
  21. 昆虫にとって昆虫マニアとは何か?
  22. 昆虫にとって昆虫採集禁止論者とは何か?
  23. 昆虫にとって昆虫研究者とは何か?
  24. 昆虫にとって戦争とは何か?
  25. 昆虫にとって生まれてきた目的とは何か?
  26. 昆虫にとって昆虫とは何か?
  27. 昆虫にとって人間の性欲とは何か?
  28. 昆虫にとって人間の持つ価値観とは何か?

最初に「昆虫にとって車とは何か?」を持ってくるなど、秀逸なつくりだ。この内容は『生物多様性を考える』にも引用されているが、いかに我々が知らないうちに虫を殺しているかを教えてくれる。ちょっと驚くほどだ。

  • え?自分は車は運転しない?
    • そういうのだめだよ。私もほとんど車を運転しないけど(最後にしたの何年前だろう)、自分で運転しなくても、こうして快適な暮らしができるのは車や電車がたくさん走っていることに支えられているんだから。そのことを忘れてはいけない。

      まだピンとこないとしたら、例えばさっき食べたご飯が自分の口に入るまでに、どれほど関連する車が走ったのか想像してみることだ。単純に食品を運ぶだけで相当車は走っているはずだ。さらに、農作物を作るためには肥料や農薬が必要で、それらを作ったり運んだりするためにまた車は走っている…etc.

      でも、こんなことを考えるようになったのは、この本を読んだ影響だなと思う。

他にも通常ならばまずスポットライトが当たらないであろう昆虫に光を当て、思いもよらぬ視点からこの人間の世界を眺めている。最初にぶっ飛んだと書いたのは、そういったいろいろな見方を提供してくれたからだ。

恥ずかしながら、沖縄と小笠原の根本的な違いは本書によって初めて知った。今でこそ小笠原は世界遺産に登録されたので、陸続きになったことのない火山島であり、そこにすむ固有種がどれほど意味のあるものなのか知るヒトは増えたのではないかとは思うのだが(え?知らないの?かつての私と同じように。じゃあ読んだほうがいいよ)。

私の感覚が間違っていなければ、犬好き猫好きなどと比べて虫好きというのはマイナーな存在だ。だから虫好きの人間の視点から書かれた本もマイナーである。動物といって思い浮かべるのは多くの場合哺乳類だと思うが、それは虫と違い少産少死である。一方、虫は多産多死である。だから、虫の世界は死にあふれている。この辺の感覚が、虫好き、それも昆虫採集をしている人とそうでない一般の人(?)とずれたりする。多くの誤解はここから生まれる、と私は思う。

この本にかぎらないのだが、虫好きは虫が死ぬところや虫がすむ環境が開発によってすっかりなくなってしまうのを見るのに慣れているせいか、自然保護や保全に関してどこかあきらめているところがあるように思う(もちろんそうじゃないヒトもいる)。本書の著者、高橋敬一はそれが顕著のようだ。その投げやりな感じが、残念な感じがしつつも、私には妙に心地よかったりもする。同時に、声高に叫ばない分、痛烈でもある。

毒をもった本だと思う。万人向けではまったくないが、だからこそ多くのヒトに一度は読んでみてほしいとも思う。虫好きはもちろん、虫嫌いもだ。読む前後で、必ずや視点が変わると思う。この視点の広がりという点で、私の中では『地中生命の驚異』以来の衝撃的な本だった。

改めて読み返してみて、緩やかに自分の中で変化が起きているのを感じる。

本文中の随所に筆者採集、高井幹夫氏撮影という昆虫の写真と小文が出てくるのも、虫好きにはちょっとした魅力。高井幹夫は『日本原色カメムシ図鑑』という魅力的な図鑑の著者の1人でもありますね。文字を見て、ぴき~んと反応してしまいました。

購入・各種データ

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昆虫にとってコンビニとは何か? (朝日選書)

関連リンク


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初回更新:2012-06-02 (土) 00:53:45
最終更新:2014-06-21 (土) 09:59:34
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